企業情報
代表者:松井 紀子
企業名:株式会社松井機業場
業 種:絹織物業
創 業:明治10年(1877年)
所在地:南砺市城端町
企業概要
「株式会社松井機業場」は明治10年に創業してから、一貫して絹製品を生産・販売している老舗の機屋です。城端は江戸時代から絹織物産業で栄え、「城端絹」で知られていましたが、現在は当社のみが城端で機屋を営んでいます。当社が作り上げる、希少な絹糸から織り出された「しけ絹」※は国内でも珍しく、独特の風合いを生かした製品を展開しています。
※「しけ絹」とは
蚕はごくまれに2頭で1つの繭を作ることがあります(全体の2~3%程度)。その繭を「玉繭」、それから紡いだ糸を「玉糸」といいます。その希少な「玉糸」を用いて織り上げたものが「しけ絹」です。「玉糸」は太さが不均一なため、絹糸と合わせて織り上げると節が生まれ、独特の風合いとなります。
事業を継いだきっかけ
今は6代目として会社経営に携わっていますが、大学卒業後は東京で働いていて、家業を継ぐ気はありませんでした。そのころ、絹について詳しい話を聞く機会があって、蚕を一頭二頭と数えること、絹は紫外線をカットしたりアンモニアを吸収したり、清潔を保つ機能があることを知りました。それまで興味のなかった絹に「こんな可能性があるんだ!」と思って目の前が明るくなりました。帰らなかったら後悔すると思い、家業を継ぐ決意をしました。
製品のこだわり
同じ絹織物業を営んでいる他の企業は、織物の技術にこだわっているところが多いですが、私たちはお蚕さんの命をいただいているという考えのもと、「しけ絹」の価値を高めることを大切にしています。富山へ帰ったばかりのときは、絹をもっと身近に感じてもらうことが大切だと思い、日常のシルクをテーマに小物製品のブランド「JOHANAS」を立ち上げました。そうして絹に向き合う過程で、当社の「しけ絹」を、普段使いのものではない、特別な価値のあるものとしてお客さまに感じてもらいたいと思うようになりました。今はお蚕さんに対する感謝の気持ちをお客さまに届けるために、素材としての「しけ絹」の特性を最大限活かしていきたいと思っています。
富山県信用保証協会へ相談したきっかけ・感想
協会とは以前からお付き合いがありましたが、前代表(父)からの事業承継を本格的に考えることになり、改めて相談に伺いました。事業承継をするにあたって、事業承継の方法や資金繰りの現状、会社をどのような存在にしていきたいかなど、今後について具体的なお話をしました。
その際はまだ前代表が資金繰りなどの経営全般に携わっており、業務分担を今後どのように振り分けるか、などの指摘がありました。またこちらが目先の課題として、売上につながるオリジナル商品の開発と、複雑化している原価管理の整理を挙げたところ、「専門家からアドバイスを受けてみてはどうか」とご提案いただいたので、協会の専門家派遣をお願いしました。
専門家派遣の感想
担当していただいた方は、製造業の現場経験が豊富で商品開発に詳しい専門家です。はじめは、オリジナル商品の開発を見据えての相談でしたが、「まずは売上を確保するべき」と助言があったので、短期間での売上アップに目的を変更しました。その目的を達成するための手段として、LP制作を提案していただきました。現在のHPでは当社の強みである「しけ絹」の良さ、どこに向けて販売しているのかが不明瞭だったため、情報がコンパクトにまとまったLPで商品の良さをアピールし、売上につなげるというものです。また、当社が扱う生地は特注品が多く、原価管理が複雑になり、適正な販売価格が分からなくなっていたため、曖昧になっていた管理方法についてアドバイスをいただきました。
結果
これまで何度か他の専門知識のある方に相談したことがありましたが、製造業の現場経験がある方は初めてで、今までとは違ったアドバイスをいただきました。新商品を開発するにあたって、当社の強みは「しけ絹」だとはっきり言ってくださったので、目指すべき方向性が明確になりました。また原価管理については、簡易的な算出方法を教えていただいたおかげで、自信をもって見積りができるようになり、今までアプローチできなかったお客さまに商品を知ってもらうことが可能になりました。間口を広める目的で計画したLPは現在制作中ですが、近々使用する写真を撮ることになっています。
今後の展望
将来的には、地元城端を代表する企業となって地域に貢献したいと思っています。この目標を達成するには売上を安定させることが第一なので、いただいたアドバイスを積極的に取り入れて実行しています。現在制作中のLPは、「しけ絹」の希少性、光をやわらかく反射する特性などをシンプルにまとめたプレゼン資料のようなもので、マテリアルとしての「しけ絹」を必要としている方へ知ってもらう効果を期待しています。アパレルや建築など、「しけ絹」の特性を活かすビジネスのアイデアはたくさんあるのですが、私も夫もそれらを整理することが苦手なので、しばらくの方針はやりたいことを絞って営業強化です。協会の専門家派遣が終わったあとも、引き続き相談していて、目標達成のための計画づくりにアドバイスをいただいています。
担当職員の声
6代目の松井社長は、老舗企業の代表として色々とプレッシャーもおありのはずですが、そのご苦労は微塵も見せず、城端しけ絹の維持・発展、地元城端への恩返しのため、ご主人と共に常に笑顔で前向きに行動しておられます。
近年ではアパレルや建材分野にも進出し、城端しけ絹の素晴らしさが少しずつ世の中に浸透してきました。
現在も更なる販路拡大等に注力されているところであり、当協会としても、引き続き良い相談相手として伴走支援を行いたいと考えております。