ジャストインタイムで意識改革

株式会社ヒラ・テック

企業情報

代表者:平山 喜将
企業名:株式会社ヒラ・テック
業 種:金属製品製造業
創 業:平成17年7月
所在地:富山市八幡

企業概要

株式会社ヒラ・テックは、製缶板金加工や機械部品加工を行う製造業。平成17年に創業し平成19年に法人化。平成31年には現在の場所に本社工場を移転しました。
本社工場には、設計から仕上げまで一貫して行える生産体制が整っており、他社では取扱いの少ない大型の加工品を扱えることが強みです。

カイゼン塾について

当協会では、地域の中小企業者に対する経営支援の取組みとして、セミナー等を実施しております。令和6年度は、株式会社ペック協会にご協力いただき、当社をモデル企業として、製造現場の業務改善を目的としたカイゼン塾を開催しました。

経営理念について

創業当時から変わらない経営理念「3つの創造力」があります。

  1. 「使う人が喜ぶ、考えぬいた製品を創造します」
    誰がどのように使うのか想像できなければ満足できる品質のものは作れません。安全に気持ちよく使えるように、お客様の顔を思い浮かべながらものを作りましょう、という考えです。
  2. 「私たちの成長と、思いやりのある職場を創造します」
    社員が成長すると会社も成長する。社員の自己成長のためによりよい職場環境を目指します。
  3. 「私たちの、充実した人生と幸せを創造します」
    よく働いてよく稼ぐことが、社員とその家族の豊かな人生につながります。

株式会社ヒラ・テック

富山県信用保証協会に相談してみた感想

コロナ禍を経て、経営改善のために何か手を打たないといけないとは思うものの、自力で行うのはなかなか難しいと悩んでいました。そのとき、お世話になっている金融機関の担当者から「保証協会がカイゼン塾のモデル企業を探している」という話を聞き、経営相談も含めて連絡したところ、保証協会からモデル企業の提案を受けました。前々からトヨタ式カイゼン※1や5S※2に興味があり、これを機に勉強しようと思いました。

※1 トヨタ式カイゼン
自動車メーカーのトヨタが生み出した業務改善の方式。作業工程にあるムダを排除することを基本とし、業務の効率化を図る。

※2 5S
整理、整頓、清掃、清潔、しつけの頭文字をまとめたもの。5Sを徹底することが業務の効率化につながるとされている。

カイゼン塾の感想

カイゼン塾の参加企業が、A班とB班に分かれて当社工場の現場で実際に業務改善を行っていく形式でした。1回目、2回目までは、私が指示していた今までのやり方を変えるので、社員はみんな戸惑っていました。3回目くらいから、腹落ちするきっかけがあったようで、社員の意識も変わってカイゼンの流れができてきたように思います。当初想定していたよりも内部のハレーションは少なく進みました。
現在の工場に移転して、かなり広くなったはずなのに、移転して1年経つと「狭い」という声が上がっていました。それまで色んなものをいっぱい作る!という方針で、結果的に余計なものを作って場所をとっていました。カイゼン塾の講師を務めていたPEC協会の方から「注文があったものだけ作るべきだ」とアドバイスされ、ジャストインタイム※3を実施すると、見た目から違いが分かるようになりました。
一番変化を感じたのは、それぞれの班に同伴していた当社の責任者たちの意識です。自分たちで色々考えて、現場を変えるようになったと思います。

※3 ジャストインタイム
必要なものを、必要なときに、必要な量だけ生産する仕組み。在庫を徹底的に減らすことで、生産性の向上を目指す。

カイゼンの流れ

製品置き場
株式会社ヒラ・テック

カイゼン前
加工中の製品が並べてあるラック(台車)を、納品先や納期を記載した紙でラベリング後、納期が遠い順に配置している。一つのスペースに占めるラックが多い。

株式会社ヒラ・テック

カイゼン後
どの製品を誰が担当しているか、納期が近いかをスケジュール管理表と連動させるように並び替えした。工程の流れに沿うように、溶接後の製品をバリ取り作業場の横にラックを移動させ、数を減らした。

検品・梱包・発送場
株式会社ヒラ・テック

カイゼン前
各部門で加工を終えた製品を入口近くの作業場でまとめ、検品と梱包作業を行い発送している。

株式会社ヒラ・テック

カイゼン後
作業の優先度を可視化するために、ボード等を利用し、製品を整理。梱包作業に使用する部品もすべて目に見える位置に並べなおした。スケジュール管理表を確認しながら作業を進めるため、作業場の近くに配置。
各部門で加工を終えた製品を置く用のラックを配置し、発送場に置いていたラックを減らすことで、納期が近い製品だけを優先的に作業できるようにした。

今後の展望

コロナ禍が明けて、中間管理職を育てなければならないと感じていました。カイゼン塾を経て、彼らの意識が変化したのは良かったです。現在は当社の方針を共有するため、こまめにミーティングを行っています。
カイゼン塾は現場責任者が主に携わっていましたが、今後は引き続きPEC協会に協力を依頼して、社員全体にカイゼンのスタンスを浸透させていこうと思っています。経営改善の本当のスタートはこれからです。

株式会社ヒラ・テック

担当職員の声

カイゼン塾にて支援をさせていただく中で、平山社長の高い改善意欲に引っ張られ、従業員の方々も含め会社全体でカイゼンに取り組まれたため、訪問させていただく度に現場の様子と従業員の方々の顔つきが変わっていくのが目に見えて分かりました。
カイゼン塾はあくまできっかけに過ぎず、カイゼンに終わりはないことから、当協会としても引き続き支援を行い、更なる経営改善に協力するとともに、今後もカイゼン塾にて多くの事業者への支援を行っていきます。

PEC協会担当者の声

このたび、富山県信用保証協会主催「カイゼン塾」の講師として、株式会社ヒラ・テックの経営改善に取り組む機会をいただきました。
カイゼンの醍醐味は、昨今話題のAIやDX、ロボットなどの最新技術を駆使しなくとも、同じ人員や設備で工夫を凝らし、ムダを廃除することで大きな成果を得られることにあります。
株式会社ヒラ・テックでは、「お客様の近くで最短のリードタイムで作る」という目標を掲げ、カイゼン活動を進めました。一品生産の工場においては、トヨタ生産方式の導入は難しいとされる一般常識を覆し、 管理の見える化や停滞ムダの廃除を徹底。これにより、人にかかるムダが明確化され、カイゼンが進み、有形の成果を上げることができました。
今回の活動で特筆すべき最大の成果は、 社長をはじめとする従業員全員の意識と行動が変化したことです。この意識変革が、さらに大きなカイゼンを生み出すこととなるでしょう。
今後も、この成功事例を糧に、さらなる経営改善が進むことを祈念しております。

金融機関担当者の声

株式会社ヒラ・テック様は創業以来、当金庫をメイン金融機関としてお取引いただいております。
コロナ禍を経て、社長様並びに社員の皆様の現場改善に対する意欲が一層高まりを見せる中、現場における多様な課題に対し、どのような切り口で優先順位を付け、どのようなアクションを具体的に実行すべきかについての相談を受けておりました。
そのような状況の中で、日常的に連携を行っている富山県信用保証協会様が本カイゼン塾の舞台となる事業者の募集をされていることを耳にし、これが社長様のニーズに合致していると考え、ご紹介しましたことが本件の契機です。
本来、自社の現場を公開することには一定の抵抗感が伴うかと存じます。しかしながら、平山社長はそうしたお気持ちよりも自社の成長を最優先に考え、快く提案を受け入れてくださいました。
本カイゼン塾を通じて株式会社ヒラ・テック様が得られた経験は、今後の自走的な成長に寄与するものと確信しております。
本カイゼン塾を企画開催頂きました富山県信用保証協会様、ご指導くださいました株式会社ペック協会様、そしてご参加されました皆様にはこの場をお借りして御礼申し上げます。